統計検定 1級 過去問 解答/解答例と解説
2014年11月30日 (日) 試験

統計数理 問4 [4]

設問の要約
  • H1 の下での F 統計量の非心度 λ を求めよ.

  • Zi, i=1,,f : 互いに独立に N(μi, 1) に従う

  • Y=Z12++Zf2 の分布 : 非心度 λ=μ12++μf2,自由度が f の非心カイ二乗分布

  • Y1Y2 は互いに独立

  • Y1 : 非心度 λ で自由度 f1 の非心カイ二乗分布

  • Y2 : 自由度 f2 のカイ二乗分布

  • F 統計量 F=(Y1/f1)/(Y2/f2) の非心度は λ

解答例

θ0=(α,α,α,α,α) とする. 問題 [2] で求めた (1) と (2) の場合の分散をそれぞれ s(1)2,s(2)2 とする.

F 統計量は次のように書ける.

F=1s(i)2Xθ^Xθ02/(51)1s(i)2xXθ^2/5F(4,5)    (k=1,2)

(1)のとき

まず,分母が従う確率分布が自由度 5 の χ2 分布に従うことを証明する.

xXθ^=(x1θ^1x2θ^1x3θ^2x4θ^2x5θ^3x6θ^3x7θ^4x8θ^4x9θ^5x10θ^5)
1s(1)2xXθ^2=(x1θ^1)2s(1)2+(x2θ^1)2s(1)2++(x9θ^5)2s(1)2+(x10θ^5)2s(1)2=(θ^1x1)2s(1)2+(θ^1x2)2s(1)2++(θ^5x9)2s(1)2+(θ^5x10)2s(1)2
ここで,
E[xXθ^]=E[x]E[Xθ^]=E[Xθ+ϵ]E[Xθ^]=E[Xθ]+E[ϵ]E[Xθ^]=Xθ+0Xθ=0
より,
E[θ^ixj]=0
であるので,
θ^iαs(1)2N(0,1)
よって,
(θ^1α)2s(1)2+(θ^1α)2s(1)2++(θ^5α)2s(1)2+(θ^5α)2s(1)2χ2(5)
次に,分子の従う確率分布が自由度 4 の非心 χ2 分布に従うことを証明し,非心度 λ を求める.
Xθ^Xθ0=(θ^1αθ^1αθ^2αθ^2αθ^3αθ^3αθ^4αθ^4αθ^5αθ^5α)
1s(1)2Xθ^Xθ02=(θ^1α)2s(1)2+(θ^1α)2s(1)2++(θ^5α)2s(1)2+(θ^5α)2s(1)2
ここで,
E[θ^iα]=E[θ^i]α=θiα
であるので,
θ^iαs(1)2N(θiα,1)
よって,非心度を λ とすれば,
(θ^1α)2s(1)2+(θ^1α)2s(1)2++(θ^5α)2s(1)2+(θ^5α)2s(1)2χ2(4,λ)
定義より,非心 χ2 分布の非心度 λ は,
λ=(θ1α)2+(θiα)2++(θ5α)2+(θ5α)2=2i=15(θiα)2
定義より,この非心度 λ は,F 統計量の非心度となる.

(2)のとき

分母が χ2 分布,分子が非心 χ2 分布に従うことの証明は省略し,非心度のみを求める.

E[Xθ^Xθ0]=E(θ^1+θ^2(α+α)θ^1+θ^3(α+α)θ^1+θ^4(α+α)θ^1+θ^5(α+α)θ^2+θ^3(α+α)θ^2+θ^4(α+α)θ^2+θ^5(α+α)θ^3+θ^4(α+α)θ^3+θ^5(α+α)θ^4+θ^5(α+α))=((θ1α)+(θ2α)(θ1α)+(θ3α)(θ1α)+(θ4α)(θ1α)+(θ5α)(θ2α)+(θ3α)(θ2α)+(θ4α)(θ2α)+(θ5α)(θ3α)+(θ4α)(θ3α)+(θ5α)(θ4α)+(θ5α))
よって,非心度 λ は,
λ={(θ1α)+(θ2α)}2++{(θ4α)+(θ5α)}2=4i=15(θiα)2+2i=14j=i+15(θiα)(θjα)
ここで,θ1+θ2+θ3+θ4+θ5=5α であることに注意すると,
2i=14j=i+15(θiα)(θjα)=i=15j=15(θiα)(θjα)i=15(θiα)2=i=15(θiα)j=15(θjα)i=15(θiα)2=i=15(θiα){(θ1α)+(θ2α)+(θ3α)+(θ4α)+(θ5α)}i=15(θiα)2=i=15(θiα)(θ1+θ2+θ3+θ4+θ55α)i=15(θiα)2=0i=15(θiα)2=i=15(θiα)2
となるなので,非心度 λ は,
λ=3i=15(θiα)2