統計検定 準1級 過去問 解答/解答例と解説
2017年06月18日 (日) 試験

選択問題及び部分記述問題 問8

問題の要約
  • Yt:民間消費 (単位: 100万ドル)

  • Xt : 国民可処分所得 (単位: 100万ドル)

  • 単回帰モデル

    Yt=87.509(18.892)+0.548Xt(0.004)
    t=1,,49
    R2=0.995
    ( ) 内の数値は標準誤差.

  • 残差系列 et の標本分散 : 14497.5

  • 1次の標本自己共分散 : 10299.8

  • 下図はこの残差系列に対する偏自己相関のプロット.

    ※図は省略

    AR モデルでモデリングするならば AR(1) が適切であると分かる.

  1. 次の3つの図(ア),(イ),(ウ)の中のひとつが上の回帰式に対する残差系列のコレログラムである.

    ※図は書略

    回帰式の残差系列のダービン・ワトソン統計量 (DW) とコレログラムの組み合わせを ① 〜 ⑤ の中らか選べ.

    ※選択肢は省略

  2. ρ^ : 残差系列の 1 次の標本自己相関係数

    Yt=Ytρ^Yt1

    Xt=Xtρ^Xt1

    t=2,,49

  3. 単回帰モデル

    Yt=β0+β1Xt+vt
    β0β1 を最小二乗法により推定.

解答

※DWや回帰係数の値を求める問題となっていますが,当サイトでは,それらの値を直接求めることはできないと判断しています.近似値を求めてその値に近いものを選択肢から選ぶということがこの問題の意図と解釈し,以下の解答例を作成しています.

  1. 答 : ②

    問題文より,

    V[et]=14497.5
    Cov[et, et1]=10299.8
    であるので,
    ρ^=Cov[et, et1]V[et]V[et1]=10299.814497.514497.50.7105
    n が十分大きいとき,次の式のように,DW は ρ^ で近似することができるので,
    DW=t=2T(etet1)2t=1Tet22(1ρ^)=0.579

    よって,DWは2より小さい値となり,正の自己相関があると判定することができる. DW の近似値を求めたので,選択肢からは 0.579 に近い値を選択すればよく,DW = 0.61 と推定できる.

    コレログラムとは,横軸を時差 h,縦軸に系列相関係数としたグラフである. 隣り合う系列は正の自己相関があることから,コレログラムでは,隣り合う系列は滑らかにつながるような感じになる.よって,コレログラムは (イ) と判断できる.

  2. 答 : ④

    この問は,コクラン・オーカット法についての問題である. コクラン・オーカット法は1階の系列相関のあった場合の対応方法の1つである.

    それぞれの単回帰モデルを

    Yt=α0+α1Xt+et  (t=1,,n)     (1)
    Yt=β0+β1Xt+vt  (t=2,,n)     (2)
    とおく. (1)t1 について書いてみると,
    Yt1=α0+α1Xt1+et1  (t=2,,n)
      ρYt1=ρ(α0+α1Xt1+et1)
      ρYt1=ρα0+α1ρXt1+ρet1     (3)
    (1)(3) をすると,
    YtρYt1=α0+α1Xt+etρα0α1ρXt1ρet1
      YtρYt1=α0ρα0+α1Xtα1ρXt1+etρet1
      YtρYt1=α0(1ρ)+α1(XtρXt1)+(etρet1)
      Yt=α0(1ρ)+α1Xt+(etρet1)
    これと,(2) を比較すると,
    β0=α0(1ρ)
    β1=α1
    β0β1 の推定値を β0^, β^1 とそれぞれおくと, 次の式で近似値を求めることができる.
    β^0=α^0(1ρ^)
    β^1=α^1
    ここで,
    α^0=87.509
    α^1=0.548
    ρ^0.7105
    であるので,
    β^0=87.509×(10.7105)25.33
    β^1=0.548
    これらは,近似値であるので,選択肢からはこれらに近い値のものを選ぶ.